「ねぇ、瞬君の好きな食べ物って何?」
無事(?)に補習が終わり一息ついた頃、その一言からこの話は始まってしまった―――。
「なんだ、いきなり。……ま、まさかアンタが料理を作るなどと言うなよ!俺は絶対に食べないからな」
「まだ何も言ってないのに拒否するなんて酷いじゃない!」
目の前の彼女は先程まで使っていた教科書を片付けながら瞬を軽く睨み付けてきた。
その「睨み付けてますよー」という頑張っている姿が可愛らしくて耐え切れなかった瞬は顔を背けた。
どんなに愛しい人の料理だろうが、この人の料理はハッキリ言って危ない。
くそ!何故政府はこの人に料理禁止令を出さないんだ!!
だが、ずっと見つめてくる彼女の様子に耐え切れなった瞬は白状してしまった。
「………明太子」
「え?」
「俺は明太子が食べ物の中で一番好きなんだ。も、勿論、俺の一番は…」
「分かったわ、任せて!瞬君の為に美味しい明太子料理を作ってあげる!」
「い、いや、俺の告は…じゃなくて、俺の最初の言葉を思い出せ!俺は…」
慌てふためく瞬に対し、悠里は瞬の言葉を無視して鼻歌を歌いながら教室を出た。
彼女のいなくなった教室はシーンと静けさが残っていた。
まるで嵐の前の静けさのように……。
―――次の補習日―――
瞬の目の前にはドドンと弁当箱が置いてあった。
詳しく言えば、悠里が朝作った弁当を補習が始まる前に持ってき、瞬の目の前に広げて置いたのだ。
「これは何だ」
「お弁当よ。瞬君に精が出るようにって思いながら頑張って作ってきたの」
瞬が絶句していながらも悠里は気にせず淡々と嬉しそうに説明をしていった。
「それでこっちが、卵焼きの中に明太子を入れてみたの。ちょっとはみ出たり、焦げたり、形が崩れちゃってるけど、美味しいはずよ!」
―――美味しいはず。
瞬の顔がどんどんと蒼白に近づいていった。
目の前にあるのが卵焼きだと?!
世間で知れ渡っている卵焼きは、黄色じゃなかったか?黒だったか?!
「先生………隠し味にイカスミでも入れたのか?」
「え?入れてないけど、もしかして入れてほしかっ…」
「いや、いい!いらない!寧ろこれ以上酷い出来にしないでくれ!!」
「これ以上って、失礼ねー」
目の前には愛しい人が作ってくれた料理。
だが見た目も味もダメだとバレンタインデーの時に知った。
チョコを固めるだけでも、あの仙道がギブアップを出した料理。
瞬の中で葛藤が始まった。
食うか食わぬか。
死ぬか生きるか。
瞬の頬に汗が一滴落ちた。
そんな事は先生が俺を信じてくれた時から決まっている!
「俺は先生の為に死ねるのなら、その、本望だ…!!」
その一言を残し、瞬は目の前の黒い物体を思いっきり口に入れた。
入れた瞬間「うっ」と苦しみながら、体の力が抜けていき前へと倒れていった。
目の前で慌てている悠里を微かに残っていた意識でずっと見ていた。
その後の瞬がどうなったのかは、本人である瞬と悠里と保健室の先生が知っていた―――。
=あとがき=
”手作り○○”でVitaminって言ったら料理しか出なかった(笑)
個人的に悠里先生がどんな料理を作るのかは興味あるが、食べたくは無いな。
てか自分で考えたのだが、明太子を卵で包んだ卵焼きは美味しいのだろうか……?
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