「あぁー…もう一体どのくらい歩けば気が済むのよ!」
アリスがチェシャ猫に言われ、森に入ってからおよそ2時間経過しただろう。
今までそんなに歩いたことが無かったため、ついにアリスはその場でしゃがみこんでしまった。
するとアリスが少し休んでいると、森の奥に人影のようなものが見えた。
チェシャ猫かと思ったが、スカートらしきものが見えた為女の子だと予想した。
アリスは近くの木につかまって、立ち上がりその影の元に走って行った。
足は痛いが、今は一人で長くこの森に居たくないという思いから速さがどんどんあがっていった。
「すいません」
苦しい息遣いの中、その影に向かって振り絞って声をかけた。
近くに行ってみると、アリスとほぼ大差のない身長の人影だった。
だがその人影はアリスが声をかけたというのに全く動かなかった。
変だ。
まず変なのは格好だ。
こんな深い森に膝まであるスカートで来るのか。
しかしその件は落ち着いて考えたら「まぁ自分みたいに好んできたのではないのかも」と予測し一人で勝手に納得した。
そしてもう一つ変なのが、確かに木が邪魔しているが彼女との距離は3m程度しかないはず。
だが服や髪の色が分からなく、挙句の果てに顔まで見えないという暗さ。
確かにこの森は暗いが、人の顔を隠すほどの暗さではないはず。
ましてや今はまだ昼時。
「あ、あの〜…すいません。森への出口をお、教えていただけませんか?」
段々その人の静かな感じが怖くなってアリスは声がどんどん震えていった。
怖い…。
この人が怖いはずなのに、別のモノにも恐れているようなこの感覚。
アリスは挙動不審に辺りを確認した。
もちろん、目の前の少女と自分以外は誰も居ない。
なのにこの不快・不安・恐怖を合体したようなこの感じは一体何……?
「だめ……行っちゃ駄目」
泣いているようなかすれた声だった。
そして彼女の身体は徐々に薄くなり、暗闇へと消えていった。
先程まで居た彼女の場所には、木が1本立っているだけだった。
あまりの出来事に、アリスはその様子を呆然と見るしかなかった。
そして彼女が完全に消えてから数秒後にハッと意識を取り戻した。
「…えっと、もしかして今のって幽霊なの?それとも疲れていたから幻でも見ていたのかな……」
そして消えた彼女の場所を凝視しているアリスは、後ろから来る訪問者に全く気がつかなかった。
戻る